世界では当たり前の「電子図書館」なぜ日本では見かけないのか?

電子書籍と言えば「アマゾンキンドル」などの個人で購入するものをイメージする人が多いのではないでしょうか?
実は電子書籍は借りることもできるのです。電子書籍を貸してくれる「電子図書館」が現在、欧米や東南アジアで加速度的に成長しています。ついには通常の図書館と肩を並べるほどの利用者数へ。
世界ではスタンダードとなりつつある電子図書館ですが、日本では全然知られていません。今後、日本には電子図書館普及の兆しはあるのでしょうか。
今回は日本や海外における電子図書館の最新事情について詳しく紹介していきます。

 

 

海外の「電子図書館」事情

 


欧米で最も電子書籍が普及しているのはアメリカです。
アメリカ公立図書館は貸し出し用の電子書籍をここ近年で一気に増やしています。図書購入予算全体の10%近くまで伸びているのです。電子書籍購入の予算が増えていることにより、紙の本の予算が急激に減らされています。

 

アメリカだけでなくカナダにも、電子図書館の普及が見られます。
カナダ・トロントにある公立図書館では、全体の書籍購入予算の20%が電子書籍となっているのです。今後も加速度的に電子書籍の貸出し数は増えていくとみられています。

 

東南アジアの中でもシンガポールは特に電子書籍が一般的になりました。国が運営する由緒正しき図書館で、電子書籍の貸出を行っているのです。2009年に開始した電子書籍の貸し出しは当初から300万件の貸し出し数。初めて1年目にしてはとんでもない数字だったのですが、2014年には1100万件へとさらなる急激な成長を見せています。なんと4倍近い成長率です。
シンガポールの図書館全体における紙の本の利用数は3400万件。電子書籍の利用者数は3分の1近くまで増加してきていることがわかります。

 

 

日本の「電子図書館」事情

 

 

ここまで海外の電子図書館を紹介してきましたが、日本ではどうでしょうか?

 

「電子図書館なんて聞いたことない」「日本には電子図書館なんてないでしょ」と思っている人も多いはず。
実は日本も電子書籍を貸し出ししている図書館は実在するのです。

 

日本で初めて電子書籍の貸し出しを始めた図書館は東京の千代田区立図書館。日本初の「電子図書館」です。
東京都千代田区に在住または通学・通勤している人限定で電子書籍を借りることができます。千代田区立図書館で利用登録さえ終わっていれば、インターネット上で電子書籍を一人につき最大5点まで借りることが可能。
読み終わったら、画面に表示される「返却」ボタンを押すだけです。もし「返却」ボタンを押し忘れても、借りてから2週間後には勝手に返却されるという優れもの。図書館に行くことなく、貸出も返却もできるという電子書籍ならではの良さを最大限生かしたサービスとなっています。
貸し出しされている電子書籍は約8000冊と十分な数とはまだ言えないかもしれません。
しかしパソコンやスマホで24時間365日どこでも本が借りられるというのは、若者の本離れを防ぐことにも一役買っていると言われています。

 

 

なぜ日本の電子図書館は増えないのか

 

 

紹介したように日本の電子図書館は、インフラとしての完成度が決して悪いわけではありません。
しかしなぜここまで日本では電子図書館の知名度が低いのでしょうか。

 

大きな理由として挙げられるのは、電子書籍を貸し出ししている電子図書館の数が他国に比べて圧倒的に少ないからでしょう。
日本にある図書館は1300以上あるのですが、電子図書館と言える図書館はわずか30館ほど。全国の図書館のおよそ2%にすぎないのです。

 

電子図書館先進国と言えるアメリカはどうでしょうか。アメリカにある図書館のうち電子図書館と化しているのは、なんと脅威の95%以上。アメリカの方が図書館の絶対数自体が多いのにも関わらず、この導入率はとんでもない数字です。

 

なぜ日本はアメリカに比べて電子図書館の数は少ないのでしょうか。
実は明らかな原因が潜んでいます。大多数の出版業者が電子書籍を貸し出すことに批判的だからです。著作権問題もあるのでしょうが、ビジネスモデルが電子書籍にマッチングしていないことが一番の問題となっています。

 

現在の書籍ビジネスは紙の本を売ってなんぼの世界。電子書籍が売れれば売れるほど、出版社にお金が入らないのです。
電子書籍が台頭してくればくるほど、自らの首を絞める状況はいまだ改善されていません。いかに世間が求めたとしても、電子図書館に協力することには及び腰にならざるを得ない事情があるのです。

 

まとめ

 

以上、日本および海外の「電子図書館」事情について紹介してきましたが、いかがだったでしょうか?
海外ではすでに人々の生活に溶け込んでいる電子図書館。しかし日本ではまだまだ普及するのは難しいというのが実情です。
世界の主流に背く形になっている日本の出版業界はずっとこのままなのでしょうか?
世間的に電子書籍自体へのニーズが高まれば、もっと多くの図書館に電子書籍貸し出しサービスが始まるかもしれません。
日本がいつ世界に追いつくのか注目していきましょう。